認知症防止にピアノを!

最近は脳育や脳トレ、アンチエイジングなんて言葉もすっかり有名になりましたよね。
当たり前と言えば当たり前ですが、大人の体は脳を含め、何もしなければどんどん衰えていきます。
子供の体だって、しっかり外で遊ばなければ病弱になってしまいますよね。
脳も同じです。子供も大人も、筋肉と同様に、脳も使えば使うほど強くなるのです。
たとえ一時衰えても、使えばまた強くなります。
脳を鍛えるには「脳をよく使うこと」が大切です。
ではどうやって脳を鍛えたら良いのでしょうか?
ここでは、ピアノを習うと脳に何が起こるのか、
脳を鍛えるのにピアノがいい、4つの理由を見ていきます
理由1.読む・弾く・聴く・理解(暗記)を
同時に行う

ピアノが脳のトレーニングになる最大の理由です。
聴覚からの情報処理を伴う(聴く)
楽器ですから、指で鍵盤を押せば当然音が鳴ります。
つまり聴覚にも意識を向けないといけません。
「きれいな音を鳴らせているかな?」
「音量はちょうどいいかな?」
「右手と左手もバランスはどうかな?」
音楽なので当たり前と言えば当たり前なんですが。
ピアノを弾いている時に、聴覚からはかなりの情報量が入ってきます。
そこに意識を向け、判断をしなければなりません。
手は鍵盤を弾き、目は楽譜を追いながらです。
視覚からの情報処理(読む)
楽譜を読むという事は当然、視覚の情報も処理することになります。
前回、ピアノを弾くのは楽譜を一瞬だけ記憶する作業の繰り返しだというお話をしました。
しかしもっと話すと、楽譜を覚える以前に、まず楽譜を読んで理解し、指をどう動かすかを判断する段階があります。
楽譜にも、当然かなりの情報量が詰まっているので、視覚からの情報処理がかなり必要なのです。
そして実際に弾いた音が、楽譜通りかどうかの判断も必要になります
実は空間認識の能力も使う
さらに、ここまで言う人は少ないのですが、
実はピアノを弾く時には空間認識能力も使っているのです。
目が楽譜を見ている間は、手を同時に見ることはできません。
ピアノを習い始めて、最初の頃は楽譜と手元を交互に見ながら弾く方も多いです。
それではつっかえつっかえになってしまいます。
ピアノ演奏を流すには、目は楽譜を追って、手元はあまり見ずに、手の位置や指の位置、鍵盤の距離感を把握しないといけません。
当たり前すぎてあまり意識しないかもしれませんよね。
でも例えば、お箸で卵焼きを挟んで口まで運ぶには、卵焼きの位置と自分の口の位置、それらの間の距離を把握しないとできない作業です。
これは空間認識の能力であり、視覚や聴覚、触覚とはまた別の脳の機能なのです。
自分の2本の腕と10本の指、そして88の白鍵と黒鍵それぞれの幅や奥行き。
目を使わずにこれらの位置関係や距離感を把握して、正確に鍵盤を押す.プロでも音を外すほど難しい、大変高度な情報処理なんです。
理由2.左右10本の指を別々に使う(弾く)

手や指をよく動かすとボケないという話は有名ですよね。
巷にもいろいろな手指の体操が出回っています。
ではピアノはどうかというと、10本フルで使います。
しかも左右バラバラに。特に大事な事は、左手の薬指や小指など、普段あまり使わない指も頻繁に使う点です。
脳を活性化させるには「普段慣れない事をやること」、
そして「別々の事を同時にやること」。これがとても重要なポイントなんです。
アンチエイジングで有名な白澤卓二先生(順天堂大学大学院医学研究科 加齢制御医学講座 教授)も、物忘れや認知症の予防のためにピアノ教室に通われているそうです。
また白澤先生曰く、右手は左脳が、左手は右脳が支配しているため、ピアノを習うと右脳と左脳の両方をバランスよく活性化させる事ができるのだそうです。
理由3.ワーキングメモリが鍛えられる(暗記)
ワーキングメモリ(作業記憶)という言葉をご存知ですか?
これは暗算など、一時的な記憶をする脳のメモ帳のような機能です。

頭の中で計画的な思考を組み立てる力の、もとになる能力ですね。
ワーキングメモリは、脳というオーケストラの指揮者にあたる前頭前野にあります。
大人の場合、このワーキングメモリが衰えると、例えば「ついさっきの事を忘れてしまう」いわゆる物忘れとか、話の内容を記憶できず、会話の流れが把握できなくなり、突然脈絡のない話に飛んでしまうといった事が起こります。
ワーキングメモリのトレーニングが、脳の老化防止にいかに大切かがお分かりいだだけると思います。
ピアノを習うと、このワーキングメモリがとても鍛えられます。
手が鍵盤を弾く時、目はそのちょっと先の楽譜を先読みしないとピアノは弾けません。
つまりピアノは「ちょっと前に見た楽譜の記憶をもとに指を動かす」という作業なのです。
目と手がずれてるって、結構すごい事だと思いませんか?
この作業に比べたら、小学校の足し算や引き算は、ただの単純作業に見えるかもしれません。
これはまさにワーキングメモリを使った作業であり、とても良いトレーニングなのです。
これは子供にとっても良い頭の体操ですし、シニアにとっても、認知症を予防したり、症状の進行を遅らせる効果が期待できます。
理由4.ドーパミンがやる気をもたらす
ドーパミンという脳内物質があります。
脳内でドーパミンが分泌されると「嬉しい!」「楽しい!」といった感情が生まれます。
すると同じ経験をもっとしたいと思い、
分泌のきっかけになった事を繰り返したいという意欲が生じるのです。
ドーパミンは「やる気」をもたらすのです。

ではどんな時にドーパミンが分泌されるのでしょうか?
そ何かに成功した時、何かが向上した時、ほめられた時、新しい発見をした時、芸術に触れた時・・・。
ピアノを習っている中で日々得られることなのです。
「音がきれいになった、リズム感が良くなったと先生にほめられた!」
「バッハの肖像によくある髪の毛がカツラだったなんて、知らなかった!」
「今まで聞くだけだった名曲が、少しだけど自分の手で弾けた!」
「今度の曲はとってもきれいだなー。この作曲家の他の曲も聞いてみたいな」
感情としても嬉しいことです。
科学的にもこのような時にドーパミンが分泌され、意欲的に取り組んでいく事ができます。
何をやるにも、大切なことは「継続」です。
苦しいことは続かないものです。
日々、よろこびを味わいながら続けられるのがピアノなのです。
ピアノを通して楽しく前向きに、豊かな心で生きられる事は素晴らしいことです。
それが結果的に認知症予防にもなるなら一石二鳥です。
また、たとえ既に認知症が発症された方であっても、
ピアノを弾き、名曲に触れる事で、楽しみや歓びを味わう事はできます。
それだけでも、どれだけご本人やご家族の救いになる事でしょうか。
認知症の進行を遅らせたり、症状の改善さえも期待できるのなら、
ピアノを弾く価値は十分にあると思います。
公開日:
最終更新日:2017/01/29