手や指をよく動かすとボケにくい。

どこかで1度くらいはこんな話を聞いたことがあると思います。
認知症の予防防止に、指を動かす体操もいろいろと考案されていますよね。

なぜ手指の体操が、物忘れや認知症の予防防止に効果があるのでしょうか。
科学的な根拠はあるのでしょうか?

ここでは手指の体操が頭の体操になる理由、ピアノが脳のトレーニングになる理由をご紹介します。

大脳の機能は入力、判断、出力の3つ

大まかに言うと、大脳の機能は3つの部分に分かれます。

1.外からの情報を受け取るところ(入力)

2.入ってきた情報を処理するところ(判断)

3.行動の情報を全身に送るところ(出力)

入力の部分があるのは頭頂葉の体性感覚野(視覚や聴覚はまた別)。
出力の部分があるのは前頭葉の運動野ということろです。

ペンフィールドの地図

さて今回のポイントはこの、入力の体性感覚野と出力の運動野です。
実は、この感覚野と運動野の多くの部分を占めているのが、手や指を支配する領域なのです。手は、ヒトが他の動物よりも特に発達した器官だけあって、大脳もそれを支配するのにかなりの範囲を要しているのです。

ペンフィールド
これはペンフィールドの地図と呼ばれるもので、
感覚野と運動野に占めている体の各部位の面積比を図式化したものです。
手と顔が大きく描かれています。右側の運動野では特に手が大きくなっていますね。

それは、左側の感覚野(入力)の手が大きいという事は、
手に刺激を与えると、それだけ感覚野の広範囲が刺激されるという事。

さらに、右側の運動野(出力)の手が大きいという事は、
手を動かそうとすると、それだけ運動野の広範囲を使う必要があるという事です。

感覚野(入力)よりも運動野(出力)の方がより範囲が広い。
単に手に刺激を与えるだけでなく、積極的に動かそうとすることで、
より大脳を活性化させることができるのです。

ちなみに、この面積比をそのまま体の比率に置き換えて作られた人形があります。

脳の中のこびと(ホムンクルス)

下の写真をご覧下さい。毎度、気持悪くてすみません。

images
左のお人形さんが感覚野(入力)の比率。右のお人形さんが運動野(出力)の比率です。
高度に発達した手を支配するのに、脳がどれだけの領域を要しているかがよく分かりますね。

この人形は「脳の中のこびと(ホムンクルス)」と呼ばれています。
こびとっぽくないですが。

最強の認知症対策は?

このように、手指の運動が脳を活性化させます。
よく、認知症の予防防止に手指の体操があげられるのはこの為です。
当然、既に認知症が発症している方でも、認知症の進行や悪化を遅らせる効果は、大いに期待できます。

では結局、認知症対策には何が良いのか?

それこそがピアノです。

左右10本の指を別々に動かすのに、どれだけ頭を使うかは想像に難くないと思います。
実際に、ピアノ教室に通われたご高齢者の方で、認知症が改善したという例もあるようです。
たとえ改善まではいかなくても、ピアノには認知症を予防したり、認知症の悪化や進行を遅らせる効果があります。