絶対音感トレーニングについて

絶対音感とは
「絶対音感」という言葉は、今ではすっかりおなじみになった印象があります。
最近では、絶対音感をチェックするアプリまでありますからね。
なぜか心惹かれる言葉です。
「絶対」というのがとても強い印象がありますからね。
「最強」と同じくらいのパワーワードです。
私(講師の石郷岡)は、この絶対音感を持っています。
たとえば、ピアノの鍵盤をポンと叩いたとき、その音が「ミ」や「ソ」などと即座に聞き分けられる能力。
これが一般の方にもわかりやすい説明だと思います。
さらに発展した「パーフェクトピッチ」と呼ばれる音感では、より細かい違いまで聞き分けられます。
現在、ピアノの調律に使われる基準音「ラ」は442Hzで調律されることが多いです。
パーフェクトピッチの持ち主は、この「440Hz」「441Hz」「442Hz」といった細かな違いまで聞き分けます。
調律師の仕事では、これをさらに10倍の精度——440.1Hz、440.2Hz、440.3Hz……という単位まで聞き分けなければなりません。
※このあたりの詳細は、「調律」のページで詳しくご紹介しています。
プロの音楽家はみんな絶対音感を持っている?
では、プロの音楽家がみんな絶対音感を持っているのでしょうか?
答えは「NO」。
絶対音感を持っていない音楽家もたくさんいます。
あるアメリカのオーケストラでは、絶対音感保持者は約60%というデータもあります。
つまり「絶対音感があるか」と「素敵な演奏をするか」は別の問題なのです。
絶対音感とは1つの「道具」や「武器」のようなもの
「音」は目に見えず、手で触れることもできません。
それを少しでもわかりやすく説明しようとするなら——
絶対音感は、“とても便利な道具” や “強力な武器” に似ています。
この能力があると、暗譜が早くなり、音のミスにも気づきやすくなります。
耳コピもできるようになり、自分で楽譜を書くことも可能です。
実際の事例を1つご紹介しましょう。
私が絶対音感を活用したお仕事
2年前、私はあるソプラノ歌手のピアノ伴奏を担当しました。
演奏したのは、シンガーソングライター・タテタカコさんの「祈りの肖像」という曲です。
「この曲をどうしても歌いたい」という希望がありましたが、楽譜がありませんでした。
歌い手の方は音大出身でしたので、自分で採譜(耳コピで楽譜を書き起こすこと)に挑戦しましたが、なかなかうまく進みません。
それに声楽が専門で、ピアノはあまり得意でなかったのです。
そこで、私が絶対音感を活かして耳コピで楽譜を作成しました。
こうして、タテタカコさんしか歌ったことのない曲が、初めてコンサートで披露されました。
さらに、私が作成したその楽譜は、タテタカコさんご本人の許可を得て、Amazonで販売されることになりました。
習得率90%!当教室の絶対音感トレーニング
かつては、絶対音感は「生まれつきの才能」だと考えられていました。
しかし、現在では多くの研究によって、訓練によって習得可能であることがわかっており、方法も確立されています。
当教室でも、絶対音感の習得に取り組んだ生徒さんの90%が習得に成功しています。

14本の色旗を使い、和音を聴き分ける訓練を行います。
2歳半から始められますが、6歳半までに終了する必要があります。
トレーニングが終了したあとは、先生が演奏した曲を楽譜に書き取る「聴音(ちょうおん)」を行います。
そのとき保護者の方は、我が子がまるで言葉をひらがなに置き換えるように音を楽譜にしていく様子を目の当たりにすると
「ああ、こういうことだったんだ。絶対音感の練習は、この日のためにやってきたんですね」
と、本当に感動なさいます。
考えてみてください。
まだひらがなもすらすら書けない我が子が、五線譜に正確にメロディや和音を再現していくのです。
絶対音感の “欠点”
絶対音感には、時折こんな欠点を指摘する声も聞きます。
「生活音がすべてドレミに聞こえて、うるさくて仕方がない」
しかしこれはあくまで個人の感じ方、つまり “聞こえ方” の問題だと思います。
私自身は、そういった不快な思いをしたことはありません。
「うるさい」と感じるかどうかは、音感ではなく、そのときの環境や心の持ち方によるのではないでしょうか。
絶対音感のある人もない人も、不快な音がすればうるさいと感じるはずです。
私や、絶対音感を持つ生徒さんたちは、包丁でモノを切る音や人の足音が「ドレミ」に聞こえる……というような経験は、特にしていません。